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論文要約20「計算論的神経科学」その1

20計算論的神経科学(川人)
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1はじめに
脳研究には
(i)情報処理の計算理論の研究
(ii)(i)のための脳内情報表現とアルゴリズムの研究
(iii)アルゴリズムを実行するハードウェアの研究
の3つのレベルの研究が可能である。
解剖や生化学による脳研究は(iii)から始まり(i)まで目指すのに対し、計算論的神経科学は(i)からトップダウン形式で研究する。つまり脳で何が計算されているのかを正面から研究する分野なのである。
新しい情報処理原理を神経計算学に与える計算論的神経科学と、それを工学的に検証する神経計算学は深く関わっており2つをまとめて神経回路研究と呼ぶ。
本稿では神経回路研究の活発化の要因の1つである視覚と運動制御の計算論的神経科学の近年の発展について紹介する。


2初期視覚
初期視覚とは2次元画像から3次元空間を推測することを目的としており、2次元画像を決定する4つの要因を分離して表現する。
これは3次元から2次元への写像である光学と逆の過程であることから逆光学と呼ばれており、数学的には、激しい変化の制限や不連続性の解消を仮定する拘束条件がないと解けない問題である。
しかし3次元の可視表面には視覚の手がかりが不連続かつ情報が集まっている箇所がある。この不連続性を統一するためにマルコフ確立場モデルである。




3マルコフ確率場とライン過程
Geman&Grmanが1984年に出した論文はノイズに汚された画像データから元画像を復元の問題を取り扱ったが、これは初期視覚において4つの画期的な進歩をもたらした。
①ある画素の取りうる値が近傍の画素の状態にのみ依存するというモデルであるマルコフ確率場モデルは、確立場がボルツマン分布とになることと等価であることを示した。
②画像の不連続性を表現する仮想の確確率変数(ライン過程)を導入した。
③ 画像復元の問題をMAP推定に定式化した。MAP推定:未知のデータを実測データから統計的に推定するもの
④最大事後確率の求値と対応するエネルギーの最小化は等価であり、局所並列演算により可能であると示した。


4神経回路モデルによる奥行き面の再構成
Kochらはライン過程とマルコフ確率場の概念を決定論的な枠組みに焼き直し、Hopfield型な神経回路で不連続性を含む初期知覚の問題を解いた。
この神経回路は雑音を伴う奥行きデータが格子場にまばらに存在しているとき滑らかな曲面を再構成する。物体の端の不連続部の曲面化を誤らないためにライン過程を格子点の間に配置する。(具体的なモデルは省略)


5随意運動制御の不良設定性
われわれは神経科学のさまざまな実験結果に基づいて3つの問題(軌道決定、逆キネマティクス逆ダイナミクス)を随意運動公園制御のために解く必要があることを提案してきた。
これら3つの過程による軌道生成は、目的の動きの次元の数よりも実際の動きの次元の方が少ないため不良設定問題である。
この不良性を解決するためのモデルを2つ紹介する。

(その2へ続く)