論文要約18「数理モデルによる網膜神経節細胞のスパイクタイミング解析」
数理モデルによる網膜神経節細胞のスパイクタイミング解析(牧野、神山)
1はじめに
網膜の出力細胞である網膜神経節細胞(RGC)は網膜内神経回路で処理された情報を神経スパイクに変換する働きをもつ。この変換は確率的に開閉するイオンチャネルにより引き起こされ、同一の刺激を複数回提示した場合スパイク生成のタイミングが揃う部分や揃わない部分があることが知られている。
なぜスパイクタイミングが揃いやすくなるのかチャネルノイズを定量的に評価した解析は行われていないが、チャネルノイズをモデルを用いて定量的に評価することは可能である。
そこで本稿ではチャネルノイズの影響を考慮したスパイクタイミング解析を行う。
2RGCモデル
研究対象のモデルは決定論的RGCモデルをもとにしてイオンチャネルの確率的開閉をMarkov遷移で示したモデルである。
3スパイクタイミングの解析手法
スパイク生成を誘発する平均刺激を求めるSTAと、チャネルノイズの定量的評価を行う手法を用いる。
3-1スパイク誘発平均刺激(STA)
STAは神経細胞の発火t秒前の丹生りょ刺激s(t)の平均である(詳細略)。
3-2イオンチャネル開閉の定量化
ノイズの自己共有分散からパワースペクトルを求め、積分することで定量化が可能となる(詳細略)。
4スパイクタイミングの解析結果
発火直前の膜電位の低下から一斉に各イオン電流が上昇していることから、膜電位の低下がスパイクタイミングを揃えていると考えられる。
また、膜電位低下付近のグラフを拡大したところAチャネルの変動が最も大きいことが分かった。
5おわりに
本研究によりスパイクタイミングを揃えているのはAチャネルではないかということが示唆された。
「主より」
膜の内外ではイオンの組成が異なっておりこの差が電位差を生む。本研究は網膜からの情報を変換する過程の新たな事実を示唆したことで今後の科学への貢献が期待される。